金属部品の多くは防食などを目的に金属や樹脂のコーティングが施されています。金属ならば主にメッキ、樹脂などの有機材料であれば被覆です。前回は、錫メッキが溶接や接合に及ぼす影響が話題でした。
今回は樹脂で表面を保護した金属材料の接合についてです。ここでは、樹脂の被覆、特に薄い被覆をポリマー層と表記することにします。
ポリマーコートした金属は溶接が困難です。金属の融点は樹脂が燃焼してしまう温度なので、ポリマーコートした金属材料をそのまま溶接すると、有機材が燃え、溶接部は欠陥だらけになってしまいます。溶接に限らず、金属が溶融して接合するプロセスでは、有機物は除去しなければなりません。
では、固相接合可能な超音波ではどうでしょう。接合部分はシッカリとポリマー層を除去し、接合部周辺は腐食などを防止できるようポリマーを残存できれば理想的です。
LINK-USが開発した超音波複合振動接合(USVB)は、過剰なポリマー除去はせずに、「ポリマーコートの壁」を突破し、高品位な接合を可能にします。
ポリマーコートした金属材料の問題点
金属表面を保護するポリマー層は、溶接や接合には「障害物」です。ポリマーコートした材料の問題点を以下に記します。
- 溶接不良:内部欠陥による強度や電導性の低下
- スパッタ:激しいスパッタ発生による、異物混入や外観悪化などの品質に悪影響
- 接合不良:超音波接合では摺動作用疎外による接合強度や通電性能の低下
- 防食性能低下:接合時におけるコート層の過剰な剥離や欠損
高温多湿な環境下における腐食防止や絶縁性能維持は、製品の耐用年数が延びるに従って、年々厳しくなっています。
LINK-USのアプローチ:低侵害な固相接合の実現
USVBの大きな特長は、侵害の少ない固相接合です。超音波複合振動は、楕円軌道を描く得得な摺動作用により、接触界面に微細な摩擦と塑性変形を発生させ、表面のポリマー層や酸化膜を破壊・拡散して、材料を原子レベルで結合(原子間結合)させます。
その結果:
- 前処理不要→接合面のポリマー層除去処理不要
- 熱影響の最小化 → 接合部近傍のポリマー層侵害の低減
- 固相接合 → 母材物理特性の維持(伝熱・電導・機械的強度など)
- 複数点を同時接合可能 → 大面積や多点接合でも生産性を維持
従来「剥がしてから接合する」しかなかったプロセスを、「そのまま接合できる」に変えたことが、最大の革新です。
期待できる効果
1. 空調・熱交換器
防食コートされたアルミフィンやチューブの接合に応用可能。接合部コート層を壊さず、安定した導通と強度を両立。
2. 自動車部品
防錆処理済みの銅・アルミ端子をそのまま接合でき、電装部品の軽量化・耐久性向上に寄与。
3. 電子機器・基板実装
絶縁コートを施したパッドや部品リードの接合に適用可能。熱変形を起こさずに接続できるため、微細構造の安定性を維持。
メリット
- 工程削減
コート層剥離などの工程やコンタミ清掃などのライン停止を省略でき、生産性向上。
- 歩留まり改善
コート層への熱ダメージやコート層剥離による不良が減り、安定した品質を確保。
- コスト削減
工程短縮と不良率低下により、製造コストを圧縮。
- 設計自由度の向上
コーティング処理を気にせず部材選定が可能になり、設計製造の自由度向上
今後の展望
電動化・省エネ化が進む中で、コーティング材は今後さらに多様化・高度化していきます。絶縁コート、耐薬品層、複合樹脂被膜など、新しい表面処理が次々登場する中で、従来の「溶接」「はんだ」では対応が難しくなります。
LINK-USのUSVBは、「低熱・低エネルギー・異材対応」という独自の特性を持ち、これら未来の材料にも柔軟に適応可能です。コーティング材の存在を制約ではなく、むしろ設計自由度を広げるチャンスに変えることができるのです。
まとめ
ポリマーコーティングは、腐食や劣化から材料を守る一方で、接合においては大きな壁となってきました。LINK-USの超音波複合振動接合は、ポリマー層を排除しつつ基材同士を確実に接合することで、この壁を突破しました。
高品位な接合と製造効率改善を同時に実現する新工法は、空調、自動車、電子機器など幅広い分野で応用が期待されます。
→ 表面コート材接合の課題をお持ちの方は、ぜひLINK-USにご相談ください。