今回もポリマーに関するお話です、最近話題の材料、複合基材の接合についてです。
二次電池セルの軽量化や電子機器の小型化に伴い、ポリマーに金属をコーティング(メッキ)した複合基材の利用が拡大しています。金属の導電性とポリマーの柔軟性・絶縁性を合わせもつ材料として、極板などへの適用を一例に挙げることができます。
複合基材に最適な接合技術として注目されているのが超音波接合です。複合材料は、溶接やはんだ付けは困難、ポリマー層が入熱により変形・焼損してしまい、材料特性を喪失してしまいます。複合基材は、金属層が数ミクロン、ポリマー層も10ミクロン前後の厚みで繊細に作られており、ダメージ無しに接合することが求められます。
LINK-USが開発した超音波複合振動接合(USVB)は、剥離強度を満足しながら通電特性も満足できる由一の革新的接合工法として注目を集めています。
複合基材接合の難しさ
ここで述べる複合基材とは、ポリマー金属(Cu、Al、Niなど)と樹脂(ポリマー、絶縁層)を積層して製造されます。このため、接合において以下の問題が発生します。
- 熱による樹脂層の破壊:レーザーやはんだでは局所的な高温で樹脂が炭化
- 層間剥離:熱膨張差により金属層と樹脂層が分離
- 導電性の確保が困難:樹脂残渣が界面に残り、抵抗増大
- 追加工程の増加:樹脂層を一度削ぎ落としてから再接合する必要がある
特に自動車の高電流部品やパワーモジュール基板では、信頼性不足や歩留まり低下を招き、量産化の大きな障壁となっていました。
LINK-USの解決策:低熱・低エネルギーでの固相接合
USVBは、超音波の複合振動を利用して接触界面に微細な摩擦と塑性流動を発生させ、表面に存在する樹脂や酸化膜を取り除きながら金属同士を直接結合します。
その結果:
- 樹脂層を破壊しない → 層全体の機械的特性を維持
- 低熱影響 → 局所温度上昇が小さく、炭化や剥離を防止
- 高導電性接合 → 樹脂残渣を排除し、低抵抗で安定した電流伝達
- 多様な材料に対応 → Cu–Al、Cu–Niクラッドなど異材複合基材も接合可能
従来「熱に弱いから接合は難しい」とされてきた複合基材に対し、新しい接合基準を提示したと言えます。
適用事例
1. 自動車用パワーモジュール基板
銅と樹脂を積層した複合基材において、樹脂絶縁層を保持したまま端子を接合。軽量化と高耐圧を同時に実現。
2. EVモーター周辺部品
振動や高温にさらされる複合基材部品を、安定した品質で量産可能。耐久性・寿命を大幅に改善。
3. 産業機器用電子基板
高電流を扱う基板に複合材を導入し、設計自由度を拡大。冷却効率と信頼性を両立。
効果とメリット
- 歩留まり向上
熱破壊や剥離不良が減少し、量産安定性が大幅に改善。 - コスト削減
前処理や樹脂除去工程が不要になり、製造ラインを効率化。 - 性能向上
接合抵抗の低減により、高出力でも安定した性能を発揮。 - 設計の自由化
樹脂層を含んだ複合基材を安心して採用できるため、次世代デバイス設計の幅が広がる。
今後の展望
EVや再生可能エネルギー分野では、さらなる小型化・軽量化・高効率化が求められます。複合基材の採用はますます増加し、それに伴い「熱に頼らない接合技術」が必須となります。
LINK-USのUSVBは、単なる製造技術ではなく、設計思想を変える技術です。材料選択の自由度を広げ、より効率的で持続可能な製品開発を可能にするでしょう。
まとめ
複合基材は次世代製品に不可欠な材料である一方、従来技術では接合が大きな壁でした。LINK-USの超音波複合振動接合は、低熱・低エネルギーで樹脂層を壊さず高品位接合を実現し、量産現場に「新しい標準」をもたらします。
→ 複合基材の接合課題をお持ちの方は、ぜひLINK-USにご相談ください。