EVバッテリーの性能を左右するのは、セルの材料だけではありません。セル内部の集電タブや外部端子との接合が、信頼性や製造効率に大きく影響を与えます。近年の高エネルギー密度セルでは、電池箔とタブの接合が量産上の重要課題となっており、従来工法では歩留まり・安全性・コストの面で限界が見えてきました。
LINK-USが開発した超音波複合振動接合(USVB)技術は、この「タブから箔までの接合」を根本から変革しつつあります。
電池箔接合の難しさ
リチウムイオン電池の電極は、数十μmの薄い銅箔やアルミ箔に活物質を塗布して構成されます。これらをタブと確実に接合し、セル外に電流を導き出す必要があります。しかし従来の接合方法には多くの課題がありました。
- 箔が極薄のため、熱や圧力に弱く変形しやす
- レーザー溶接では熱影響により活物質層が剥離し、性能低下を招く
- 接合時にバリやコンタミが発生 → 短絡や不良要因に
- 清掃工程が必須 → 生産効率を下げ、コスト増につながる
このように、電池箔は「扱いが難しい材料」であり、タブとの安定接合は業界にとって大きなボトルネックとなっていました。
LINK-USの低エネルギー接合がもたらすブレークスルー
LINK-USのUSVBは、従来の溶融を伴う工法とは異なり、材料を溶かさずに複合振動で原子レベルの接合を実現します。その特長は、まさに電池箔接合に最適です。
- 低エネルギーでの接合 → 箔や活物質層を破壊せずに接合可能
- 熱影響低減 → 活物質の特性を損なわず、電池性能を維持
- コンタミ低減 → 清掃工程を削減、歩留まり向上
- 多層箔の同時接合 → 複数枚をワンパスで接合でき、生産性アップ
さらに、Cu–AlやCu–Niといった異材組み合わせにも対応できるため、将来の高出力・高容量セル設計にも柔軟に適応します。
製造プロセス改善のインパクト
USVBを電池箔・タブ接合に導入することで、製造現場には次のような効果が期待されます。
- 歩留まり改善
バリ・コンタミの発生が大幅に減少し、不良率が低下。結果として製造コストが削減されます。 - 工程短縮
清掃・リワーク工程が不要となり、ラインのスループットが向上。1ラインあたりの生産能力が増加。 - セル性能の向上
活物質層の剥離や劣化を防ぎ、充放電サイクルの安定性を確保。寿命延長にもつながります。 - 設計自由度の拡大
異材接合が可能なため、次世代セルに求められる新材料・新構造の導入を後押しします。
EV業界への広がり
電池箔接合の革新は、セル単体にとどまらず、モジュールやパックレベルでの効率化にも波及します。例えば:
- 高容量セルの量産効率改善 → GWh単位でのコスト削減
- 安全性向上 → 内部短絡リスクの低減
- 新材料導入の加速 → Cu–Niクラッドなど、従来困難だった材料設計を可能に
これにより、EVメーカーは航続距離やコスト競争力で優位性を確立でき、エンドユーザーにとっても安全・安心なバッテリーが提供されます。
まとめ
電池箔とタブの接合は、EVバッテリー製造の「最後の難関」とされてきました。LINK-USの超音波複合振動接合は、低エネルギー・低熱での固相接合によって、この難題を解決します。
歩留まり改善、工程短縮、セル性能の向上を同時に実現するこの技術は、まさに新しい電池製造プロセスの扉を開く存在です。
→ 詳細な技術検討やPoCに関するご相談は、ぜひLINK-USまでお問い合わせください。